恋愛の始め方
彼と、真正面からぶつかるのが怖かった。

彼に、否定されるのが怖かった。

彼と結んだ契約が、あたしのことを動けなくさせる。


『面倒なことにならないよう、お互いのことを好きにならないのを条件にしよう』


何も考えずに頷いた、契約条件。

始めの頃は、何て良い条件だと思ってた。

でも、一緒に居た時間が思考を麻痺させた。

疑似恋愛と理解して居たのに、恋愛感情が生まれてしまった。


「そ、傷付きたくないから逃げた」

「逃げて、もっと苦しくならなかった?」


かなの言葉に、カッと喉の奥が熱くなる。


「かなには、敵わないなぁ。前に、言ったじゃん?『割り切ってても、割り切れなくなる。だから、覚悟はしておきなよ』って。ちゃんとした覚悟もないくせに、ダラダラ続けたあたしがバカだった」


あたしは、グッと下唇を噛む。

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