年下男子とリビドーと

「紘希(こうき)」
「おかえり」

「来るなら一言入れてくれれば良いのに。何の用意も無いよ」
「買って来た」

紘希がスーパーの袋を持ち上げて見せた。
わたしは帰って来たそのままの格好で隣に座り、一緒に缶ビールを開ける。

「おつかれー」

最近は、思い付いた時にお互いの部屋で適当なご飯を食べて飲む、そんなデートが多い。
そういえば、最後に何処かへ出掛けたのはいつだろう……
唐揚げを頬張りながら、ぼんやり考えた。

えーっと……バレンタインの時はディナーに行ったな。
でも、あの時もご飯食べてチョコレート渡しただけだった。
ホワイトデーは一週間遅れで、ピアスを貰った。紘希の部屋で。
正直、もしかしてもしかしたら婚約指輪的なものが来たりしないかと、淡い期待を寄せていた。
見事に裏切られたけど。

そして、あれから2ヶ月は経過している。
いつの間にか、桜も終わった。
わたし達の、3年記念日も終わった。
紘希も何もしなかったけれど、わたしも何もしなかった。

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