年下男子とリビドーと
「で、クライアントの要望に添えって部長が言って聞かなくて……」
はたと我に返り、慌ててしまった。
「そっか、大変だね!」
「……莉南(りな)、聞いて無かったろ」
「……ごめん……」
紘希は黙ってしまった。
少し怒っている。彼はすぐに黙るので、わかりやすい。
「えっと、今日うちのグループに新しいバイトの子が来てね、説明とかしたんだ。それで少し疲れてるのかも」
わたしは、しどろもどろで取り繕う。
「そうなんだ」
「けっこう礼儀正しい子でね、最初は失礼なヤツと思ったけど」
「……男?」
紘希が真顔になる。
「えっ……男って言っても、学生の子だよ! めっちゃ若いの」
「何慌ててんの?」
「そんなことな……」
わたしの言葉は唇で封じられた。
重なった唇は、次第に首元へ降りて行く。
「こう……き……」
わたしを弄る手に身を預けながら、頭の中は冷静に、ごはんが冷めちゃうな、と考えていた。