年下男子とリビドーと
予想通り、紘希は昼過ぎに帰った。
わたしは半日間ひとりを満喫し、日曜日の昼頃に出社した。
日曜日は忙しい。忙殺されて、もう夕方だ。
ふと気付くと、隣の席の前に成海くんが立っていた。
挨拶をして椅子に腰掛ける。
……あれ? 他の席空いてなかった?
他にも空席があるのに、わざわざ隣に座ったように感じた。
「……何か質問とかある?」
声を掛けてみた。
「……今は、とにかく数をこなしてみます」
よくわからない返事が来たけど、あまり気に留めず作業に戻る。
今日も9時の終業を迎えた。
「冴木さん、今日も件数上げてるねー! さすが」
課長は数字しか見ていないが、褒められるのは悪い気はしないので、笑顔を返した。
何か視線を感じて振り返ると、成海くんと目が合う。
「どうかした?」
「冴木さん、今日はパンツなんですね」
「え? あぁうん……」
彼の投げ掛けて来た言葉の意味がよくわからず、頭に疑問を浮かべていると、強烈な一言が返って来た。
「ボールペンって案外、凶器になるかもしれないですね。ストッキングに突き刺さるくらいだし」
彼は状況などお構いなしに、そう言い放った。
「ストッキング?」
隣にいた派遣の人が反応してしまった。
「いやっ、別に変な意味じゃないですよ?」
わたしは慌ててフォローを入れるが、作り笑いが引き攣る。
「取り繕われると逆に変な意味に聞こえませんか?」
成海くんが笑顔で彼女に話し掛ける。
それ、君が振るのかい!?
「ちっちょっと!」
わたしは危機を感じ、成海くんの手首を掴んで、フロアの隅に飛んで行った。