もしもの恋となのにの恋
俺は夏喜の細い手首から自分の手をそっと離し、その手を夏喜の手のひらへと移動させた。
俺は夏喜のスラリと伸びた細い指に自分の指をやんわりと絡ませた。
世に言う恋人繋ぎを俺は夏喜としてみたのだ。
夏喜はひどく動揺していた。
俺はひどく白けていた。
もしも、千鶴なら・・・。
また、そんなことを思った時だった・・・。
見慣れた人影がぐるぐると回る鰯の水槽の前ではしゃいでいた。
俺と夏喜は同時に固まり、その人物をこれでもかと注視した。
「・・・千鶴」
夏喜がポツリと呟いた。
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