冷徹社長の秘密〜彼が社長を脱いだなら〜
結局、渋々、服従というか承諾するしかなかった。とはいえ、やっぱりそんなこと、できるはずがない。

「やっぱり、無理です」と言うも社長は聞く耳持たず、そのまま私の手を引きながらグイグイと進んで行く。


「ど、どこに行くんですか?」


「とりあえず、人目につかないとこかな」


「ま、ま、待ってください!わ、私、朝ご飯が食べたいです」


ピタリと止まる社長。昨日と同じようにまた、遮ってしまったから怒られるかなと思ったりもしたけれど、「そうだな」と言って、クルリと踵を返す。

楽しそうで、でも、何かを企んでいそうな気もするその表情に私は少しだけ、悪い予感を感じずにはいられなかった。


「さあ、何でも好きなものを食っていいぞ。みぃは取れないだろうから、俺が取ってやるからな」


悪い予感は、当たらなかった。連れて来られた場所は昨日のお寿司屋さんと同じ六階にある豪華レストラン。このレストランは朝だけバイキングをやっているらしい。しかも、ホテルの宿泊客だけが食べられるという決まりもあり、本当に私みたいな一般客は普段ならお断りされるもの。


当然、こんなに豪華な食事が並んだレストランでのバイキングは、初めて。


焼きたてのパン、炊きたてのご飯。和洋食どちらも種類が豊富。昨日、あんなに豪華なお寿司をたくさん食べたのに、それが嘘かのようにお腹がすいてきた。
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