アンフィニッシュト・ブルー(旧題 後宮)

私も店の近所にカガン公邸があるということがなければ、そのニュースを聞き流していたかもしれない。数十秒のニュース以上にそのことについて知ろうともしなかったかもしれない。

けれど、この店の近くにはカガン公邸があり、仕事とはいえ毎日のように公邸のカガン人と話をするのだ。
ここに来る人々の身内や友人があの場所にいるかもしれない。

そう思うとひどく恐ろしかった。




この爆発事件はその後半日もしない間に再びくわしく報道された。
報道の内容はこの爆発がただの爆発ではなく、カガン国の軍部が暴走したものだったらしい。

最初の爆発から八時間ほどでカガンの王宮と首都がカガン軍に制圧され、国王夫妻は王宮の一室に閉じ込められてしまった。
カガンの国政を担っていたカガン愛国政党の党首が逮捕され、投獄された。罪状は国家反逆罪だという。
カガンから天然ガスや石油を輸入しているヨーロッパ各国はこの突然のクーデターに素早く反応し、クーデターを非難した。


まるで歴史の教科書に載っているようなことが次々に起こっていた。

クーデターとはこんなに短時間の間に起こるものなのか。

ポトスを抱いた王子の嬉しそうな様子が思い出された。

現在王宮に閉じこめられているユスティニアノス8世はあの王子の父親ということになる。
両親である国王夫妻が軍に捕らえられ、王子はどれほど不安な気持ちでいるだろう。


その日から私は店でテレビを一日中つけっぱなしにするようになった。店を訪れるカガン人のお客が国のことを知りたいだろうから、と他のお客には説明したが、私自身もカガンの事が気になっていた。

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