アンフィニッシュト・ブルー(旧題 後宮)

ほんの十数秒前まで占いの結果に喜んでいたキャスターが、少しかしこまった態度で映像について説明した。

「カガンの王子といえば、先月、あまりにもなんというか……」

「すごくお若くて……ええと。一国の王子にこういう表現をするのもいけないのかもしれませんけど、イケメンでいらっしゃいましたよね。一部ではファンクラブまでできたとか」

書道家だというコメンテーターと元人気ブロガーのタレントが絶妙なタイミングで彼の情報を補足した。

同時に、番組スタッフが大きなフリップに印刷されたミハイルの写真を出した。


それは、私が最後に見たミハイル……。
つまり仕立ての良いジャケットに身を包んで報道陣に手を振っている彼の姿だった。
突然突きつけられたミハイルの姿に、私の心臓がぎゅっと縮んだような気がした。


「そのカガンの王子がクーデターのために日本への留学を途中で切り上げ、急遽(きゅうきょ)カガンに帰国したのが先月。
そして昨日、ミハイル殿下の即位式が行われ、空白だったカガンの第32代国王として即位されました。現地に加賀リポーターが飛んでいます」

キャスターが原稿を読み上げると、画面が花を飾ったスタジオから少しくすんだ印象の街並みが続くカガンの夜の映像に切り替わった。


「おはようございます。カガン首都、イティルから即位式の模様をお送りします」

現地リポーターが、白い息を吐きながらリポートをしようとすると、若い学生のような男性数人がリポーターの脇で声をあげて互いの体に酒をかけた。嬉しそうに声をあげている。
一瞬そちらに気をとられたリポーターは苦笑してカメラのほうに向き直った。

「このように、突然のクーデターで苦しんだカガンはお祝いムードに包まれています。

元々カガン国民は王室の人気が高い国ですが、今回、史上最も若い国王が新しく誕生したことにより、王室の人気はますます高まっている様子です。
カガンの伝統にのっとり、今後一ヶ月の間、王室での行事が続きますが、一方でクーデターにより破壊された首都のインフラ整備、クーデター軍によって銃殺刑となった前国王夫妻の葬儀、名誉回復のための調査など、政治的な課題が残されています。
またクーデターに加わったとされる陸軍将校たちの処分、そしてクーデターの再発防止のために大規模な軍部の再編が行われると予想されますが、彼らの一部は未だ他国に逃亡しているとの情報もあります。

新国王の取り組むべき課題は多く残っているといえるでしょう。
では、街の声をお聞きください」
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