もしも、もしも、ね。
「久しぶり。アカリ。」
そう言って微笑む表情は、昔とまったく変わらない。
すべてを見透かしたような冷めた瞳。
けれど作り上げられた、口角のくっと上がった三日月の唇。
整えられた、スッとつりあがった眉はより目を鋭くさせていて。
無造作に、けれど今時風に整えられた髪。
シンプルな形をしたピアスは、前と変わらず女の子からの貢物だろうか。
一瞬の間に頭を構成する部位を観察してしまう私。
変わらない、それが結論だった。
「変わらねぇな、お前もさ。」
アンタもよ。
そう言いたいのに声が出ない。
周囲の女の子の視線がすべて彼に集まるこの状況すら変わらないんだから。
「何黙ってんの?・・・そんなとこも昔と一緒だけど。」
「・・・。」
「オレのこと、忘れちゃった?」
「忘れるわけ、ない。」
忘れるわけが無い。
忘れたい。
けれど消えない。
この人の存在。この人の言葉。この人に関わる記憶。
この人に付けられた、傷。