もしも、もしも、ね。


前を歩く望果が突然振り返る。

そう言って笑った後、「お返し」と舌を出して目のしたを引っ張った。

やっぱり、ユウとのこと、同じように引きずってたんだ。



「ごめん、望果。」

「いいよいいよ、これでもうおあいこでしょ?」



代わりに、これからはもうあんまり秘密作らないでね。

望果は悪戯気に笑った。

うん、と私も笑った。

女の友情、こうやってサバサバしてれば嫌いじゃない。

そんなことを思っていたせいで、注意が遅れた。

「望果!」と准君が慌てて声を上げるが、それすらももう遅くて。





後ろ向きに歩いていた望果は、前にいた男性に思い切り激突した。



「もう、望果!大丈夫?」

「痛いー。」



腰を押さえて半泣きの望果に「後ろ向きで歩いたりするからだぞ」と准君が駆け寄る。

こっちはこれで治まるとして、私は体を起こして頭を下げた。



「すみません、こちらの不注意で。」

「いえ、オレこそよそ見してたから・・・って、アカリ?」

「え?」



謝罪に返って来たのは謙遜。

けれど、すぐに名前を呼ばれて、私は顔を上げた。

そして、凍りつく。



「やっぱりアカリじゃん。」

「・・・ッ。」



どうして、どうして、コイツが。

警報の鐘は気のせいなんかじゃなかった。

でも。

でも、でも。

まさか、本当に・・・当たる、だなんて。

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