もしも、もしも、ね。


心臓が止まるかと思った。

刑の宣告を受けたように、血の気が引いた。

無視したい。聞きたくない。

電源を切ろうかとすら思った。

けれど、この文字の並びを見るだけで泣きたいくらい胸が苦しくなって、

声を聞きたいと思ってしまって、

電話はまた私の耳に戻る。



『暁里―。』

「え?あ、ごめん!」

『もしかして、俺が誰か分かってなかった?』

「いや、っていうかディスプレイ見ないで出ちゃって・・・。」

『やっぱり分かってなかったんじゃん。』



電話の向こうで篠田はクスクス笑う。

私はベッドにポスンと座りながら、必死に平静を装って「うるさいな」と答えた。

必死に自分を繕う私と違って、篠田は悔しいくらいいつも通りだった。

本命がいる彼にとって、やっぱり私なんて取るに足らない存在なんだろう。

そう再認識させられて、泣きそうになるのをぐっとこらえた。



「分かったけど信じられなかったのよ。」

『どうして?』

「どうしてもこうしても、だって・・・」



私は口をつぐんだ。

“今彼女といるんでしょ?”

そんなこと言ってどうする?

―――どうせ振られるなら、明日がいい。

一日でも長く、彼の“彼女”というポジションでいたい。それが、例え嘘偽りでも。


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