クールな上司とトキメキ新婚!?ライフ
「お疲れさまです」
「疲れたよ。地方の店舗視察の帰りなんだけどさ」
「いま戻ってきたんですか?」
「そうだよ。明日朝イチで必要な資料が出てきたから、それを取りに寄ったとこ」
穏やかな彼の視線は、私を口説いていたあの頃にも、つき合っていた時間にもない。
「柏原さんって、非常階段が好きなんですか?」
「なんで?」
「いつもいる気がして」
「あぁ、結構ヘビーユーザーかも。エレベーターを待ってる時間に移動できる距離なら」
酔った身体に、ずしりと重いバッグを持ち直す。
こんなことをしているから、人事に呼び出されてしまったのだ。
さすがに今日は何もないだろうけど、沙良さんに変な弱みを握られたくはない。
部長に恋をしている同士としても。
負けが決定していても。
「帰るなら、途中まで行こう」
柏原さんが非常階段のドアに預けていた背を離し、スーツケースを引きながら私の前を行く。