【完】確信犯な彼 ≪番外編公開中≫
「……なあ、佳代?」
そう呼びかける彼の声が、
……多分、依然彼が夢の中で呼んだ、
結衣さんの名前を呼ぶ声に、
その優しい響きが似通っている気がして……。
私の髪を撫ぜる指が、どこまでも
優しくて甘やかしてくれるから、

ぎゅっと目をつぶる。
小さく息を整える。

「……壊れないから、いいよ?」
ゆっくり瞳を開いて、
彼の瞳をじっと見つめて、
つい、そう言ってしまったのは、
結衣さんに対しての対抗心からかもしれない。
「いいって……お前……」
彼の声が焦ったように少し上擦るのが、何だか可愛く思える。
そっと、手を伸ばして、
短いその髪に、自ら触れる。

「……いいよ? 私はもう、『一生俺のモノ』なんでしょ?
だったら、もう、今この瞬間から拓海のモノでいいよ……」

そっと指先を伸ばす。
ドキドキする心臓をなだめながら、そっと彼のうなじに指先を伸ばす。
そのまま抱き寄せるようにすると、
彼が私の唇に自らのそれを寄せる。

「……ったく、お前は……」
煽ったのはお前だからな?
小さく笑って彼が言う。

「怖かったり、不安だったり、痛かったりしたら言えよ?」
そっと彼が額にキスを落す。
その言葉に私は小さく頷く。
それに、初めてだ、って素直に言ってしまったら
却って気分は楽になってしまった。

そんな自分がおかしくて、私がくすり、と笑うと、
「……随分余裕がありそうだな?」
一瞬彼がそう言うと、そのまま私にキスをする。
そっと瞳を閉じると、徐々に彼のキスが深まる。
口内を舌先でたどられて、ゾクリ、と震える。

でも決して嫌な感覚ではなくて、どこか
くすぐったい中にも、甘い感覚が混じる。
そのままゆるゆると、唇を滑らせて、
頬に、額に、瞼にキスが降ってくる。
それから、耳を舌がなぞる。
ピクン、と震える私を彼がそっと抱きしめる。

「……少しは余裕なくなってきたか?」
意地悪く言うその言葉に、胸がきゅっと締め付けられる。
そっと首筋にキスを落されて、
ゾクリとする感覚が、背筋を走る。
「……んっ……」
小さく声が漏れると、彼がそっと唇を撫ぜる。
「……怖くはないか?」
そう尋ねてくれるのは、きっと私が怖い思いをしたことがあるからだ。
だから、唇に小さな笑みを浮かべて、私は微笑む。

「ん。大丈夫。拓海だから……」
私が彼のシャツにそっと手を添えて、
そう言うと彼が小さく笑う。
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