【完】確信犯な彼 ≪番外編公開中≫
コイツに、無理やり名前で呼ぶようにと言わせたのは、
ちょっとした気まぐれだった。
元々名字にも先生呼ばわりもあまり好きじゃない。
だから、名前で呼べと、
そのくらいのつもりだったのだが、
そう呼ばせたことで余計自分の気持ちをぐらつかせたなと、
今更ながら思う。

そして、この信じ切った瞳を見て、
何度心苦しい思いをしたことだろう。

常に気づけば。

手に入れたい。
求めてはいけない。
誰にもやりたくない。
自分だけのモノにしたい……。

その葛藤で。
果たすべき義務も果たせてない、
誰かを幸せにする資格などない、
そう思いながらも、
佳代が誰かに微笑みかけるのが苦しくて、切なかった。
他の男が佳代を望んでいるのに気づく自分が悔しかった。

それは、それだけ、佳代のことを見ている自分を
自覚するだけだったからだ。

人の感情には比較的敏感な方だ、
と言う自覚はある。
だからこそ、佳代の瞳が訴えかける視線が、
常に自分に向いている事、
切ないほど恋しい色をその瞳に浮かべていることに
いつからか気づいていた。

その資格もないのに、
その視線を佳代から投げかけられるのが、
たまらなく、心地よかった。
その視線を独り占めしたいと思うようになるのには、
さほど時間がかからなかった。

決して自らの変化を認めようとしてなかったが、
きっと、その時点で
俺はコイツに惚れていたのだろうと思う。

完全に拒絶することはできなかった。
緩やかに彼女を遠ざけながら、
どこかで、彼女が心を寄せる隙を作っていた。
……最初は無自覚に、だが実は意図的に。
徐々に確信犯的に……。

他の男におびえて、
飛び込んでくるのは常に自分の腕の中で、
今だって、男に触れられるのは初めてだというのに、
どこか甘い笑みを浮かべて、
安心しきって俺に身を任せきっている。

唇を走らせて、緩やかにその衣類を奪っていく。
そんな時にすら、浮かぶのは、
穏やかで心地よさそうな微笑みだ。
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