ケダモノ、148円ナリ
 ぽん、と明日実は手を打った。

「あのときの」

 ようやく本当に思い出した。

 本当に一年近く前ではないか。

 今度就職する会社のセミナーを受けに行くのに、迷いそうだったからタクシーで行こうと、タクシー乗り場に並んでいた。

 千円札あったっけ?

 一万円だと運転手さんに嫌がられるという都市伝説を聞くが、と思いながら、財布の中を見ていると、
『ケダモノ ¥148』
と印刷されたレシートが出て来たのだ。

「ケダモノ 148円」
 そのまま口に出して読むと、後ろから、

「クダモノ 148円だ。
 莫迦者」
と声がした。

 振り向くと、この男が立っていた。

 ……なんて態度のデカいイケメン様。

「タクシー来たぞ」

 さっさと乗れ、俺も急ぐんだ、と続けてきたタクシーを振り返りながら、開いたドアの方に押してくる。

「思い出しました。
 ……何故、よりにもよって、貴方に声をかけてしまったのでしょう」

 貴継は少し考え、
「俺が好みだったからだろう」
としゃあしゃあと言ってきた。
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