ケダモノ、148円ナリ
 男がなにやらゴージャスそうな女にドアを開けてやっている。

 遠目でよくは見えないが、もしや、あれがこの人の恋人とか? と思っていると、

「断るなら、全部お前の『おにいさま』とやらにバラすぞ」
と貴継は脅してくる。

「稲本顕人か。
 名前は聞いたことあるな」
と唐突に呟くので、

「えっ。
 なんでですかっ」
と訊くと、貴継は、

「いや、仕事の関係で」
と言う。

「穏やかそうな顔をして、かなりの切れ者だとか。

 お前は惚けた顔で、なにか隠し技でもないのか。
 佐野明日実」

「隠し技?」

 ……耳で餃子とか?

 言ったら殴られそうなので、さすがに、そこは黙った。

 もう少し実用的な技だろうか?

 少し考え、
「そうだ。
 百円玉二枚を三枚に見せることが出来ます」
と財布を探している間に、

「それは、隠し芸だ。
 行くぞ」
と貴継は腕をつかんだまま、レジに向かう。
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