ケダモノ、148円ナリ
 



「貴継さん……?」

 深夜、なにも言わずに誰かが部屋に入ってきた。

 だが、その気配だけで、違う、と思った。

 貴継ではない。

「嫌ですっ。
 やめてくださいっ」

 ふいに上に乗ってきたその男を押し退ける。

 顔を引っ掻いてしまったようだ。

 いてっ、と男が声を上げた。

 たが、間近に香ったその男の匂いで、すでにそれが誰だかわかっていた。

 昔は近くにその人が来て、その落ち着いた香りを嗅ぐだけで、どきどきしていたのに。

「……おにいさま」

 何処から入ってきたのですか。

 なんで私の上に乗ってるんですか。

 いろいろと訊きたいことはあったが、なんだか恐ろしくて言葉にならない。

「……おにいさま、やめてください」

 明日実、と顕人は明日実の両腕を抵抗できないよう、強く押さえつけて言う。
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