柔らかな彼女
その後、紳士服・婦人服とお互いの洋服を選んで買い物した。

「もう一か所、付き合ってくれる?大丈夫?疲れてない?」

「うん、大丈夫。荷物だってたけが全部もってくれてるし。」

オレの右手には、二人分の洋服がはいった紙袋。

そのまま、貴金属売り場へ移動した。
すぐに、黒いワンピースの制服に身を包んだ店員が近づいてくる。

「何をお探しですか?」

「彼女に、婚約指輪を・・・。」

さあやが、すごい勢いでオレの顔を見て、右手でオレの手をひっぱり
首を振る。

「だめ、・・・だめ。」

「いいから、オレの好きにさせて。安心が指輪で買えるなら安いもんでしょ?
でも、飲食業は、仕事中はつけられないかな?」

「うん、昼間はいいけど夜は無理かも・・・。ごめん。」

「彼女に合いそうなの、見せてもらっていいですか?」

店員さんが、少し考えながらショーケースから、何点か見繕ってくれる。
オレは彼女の左手をとり、ひとつずつ、彼女の指にあわせていく、
彼女は困ったような顔をして、黙っている。

「あっ。「あっ!」」

何個かためして、いるうちに彼女の指にしっくりくるのがあった。
これだと思って、声を出すと彼女の声とかぶってしまった。

「やっぱり?これだよね?」

すごくシンプルなプラチナにダイヤの指輪、でもどれより彼女の
指にしっくりきていた。白くて長い指が、もっときれいに見える。
不思議なことにサイズもぴったり。

店員さんがいることも忘れ、見つめあったしまった。

「お似合いですね。サイズもぴったりのようです。文字入れでしたら
お買いものをしている間にできますがどういたしますか?」

「これにします。他をみてくるのでお願いします。」

店員さんが用意した、文字入れの用紙に記入し控えを受け取る。



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