柔らかな彼女

彼の嬉しい決意

デパ地下で夕飯を買い込んだ後、指輪を受け取りに貴金属売り場へ
戻った。

店員さんは、私たちをみるとすぐに小さな紙袋をもってきて

「指輪をご確認ください。」

と、白い手袋をした手で濃紺のケースをこちら向きに開けてくれた。

たけは、手に取り、指輪の内側に刻まれた文字を確認し頷いた。

「大丈夫です。」

帰りの電車でも、歩く道でもたけが一生懸命話しかけてくれるけど
私は、どんどん無口になってしまう。

彼が、指輪を買ってくれたのは、正直嬉しい。特別なものをもらった
感は半端ない。でも、いいの?
こんなに早く、絶対に気が変わらない?
まだ、お互いのことほとんど何にも知らないのに大丈夫なの?って
いろいろ、ぐるぐる考えてしまう。

彼の部屋について、荷物をおろしソファに座らされる。
彼はソファの下に膝をついて、私を少し見上げながら先ほどの指輪を
取り出し、私の手をとる。

「さあや、すっかり無口になっちゃったけど、怒ってる?」

優しい声で聞いてくれる。

「怒ってるわけじゃないの。でも・・・。急すぎて心がついていけてない。」

彼は、一度指輪をケースにしまい、ローテーブルに置いて私の手を両手で
包み込む。

「オレも、自分でもどうかしてるって、わかってる。
でも、止まらない。好きで好きでしょうがない。とにかく、少しでも
長く一緒にいたくて、一緒にいれば触れたくて、・・・食べちゃいたい
くらい。頭おかしくなりそうなんだ。
それで、さあやは、気が付いてるかわからないけど、オレたち昨日から
何度もエッチしてるけど、一度も避妊してないんだ。
ゴムもしてないし、外にも出してない。いつ赤ちゃんできてもおかしく
ないってこと。
でも、いい加減な気持ちでしてないから、オレも本気でさあやが欲しく
て、さあやも欲しがってくれてるの全部わかったから、だから・・・
結婚してください。
オレの赤ちゃん産んで、家族になってほしい。
そういうこと全部考えて、指輪買ったんだ。受け取ってくれる?」

私の手を包んでいたたけの手が、離され私の顔を両手で包み込んで
両方の親指が頬を撫でたときに、自分が涙を流していたことに気付く。

「返事は?さあや?」

「・・・。」

声がでなくて、何度も頷く。頷きながら彼の首に腕を回し引き寄せて
キス。

激しくキスを繰り返し、ようやく離れると彼はふっと笑って言う。

「さあやの、イエスはいつもキスなの?他の男には、絶対だめだよ。」
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