柔らかな彼女
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わたしの休日

土曜の朝、七時に目覚め、サラダにヨーグルト、オレンジジュースの朝食を済ませる。
このあと、お楽しみが待っているから、簡単に済ませる。

洗濯をすませ、細身のジーンズにゆったりした薄いグリーンのニットを合わせつばが大きめの
帽子をかぶる。
日焼け止めの上に、薄くファンデーションを塗りパールピンクの口紅を塗る。
普段かから、アイメイクはしないし、チークもつけない。
我ながら、女子力低いなーと鏡を見るとため息がでる。
玄関で、白いスニーカーを履いて家を出る。電車を乗り継ぎ、降りたのは
”府中本町”駅。駅から続く屋根のついた道を人の流れとともにひたすら歩く。
歩いているのは大半がおじさん。手には新聞、すでに耳に赤ペンがさしてある人もいる。

私が小さいころから、毎週土日に通っている大好きな道。
今日は、東京競馬の開催日なのでチケット売り場に並んでチケットを購入。チケットを手に
券売機から離れようと振り返り、後ろに並んでいる男性をよける様に動くと

「えっ!!さあちゃん!?」
と私の頭一つ分上からの声。声のほうに目を移すと

「?!っ!須藤さん?」
二人一緒に、見つめあって固まる。

「あっ、須藤さん、次の方まってますから取りあえずチケット…。」

「うん。そうだね。ちょっと待ってて。」
とあわてて券を買って、二人で列を離れる。
入口付近に移動すると、田川さんが待っていた。

「あれ?さあちゃん?」

「うん、今そこであった。」
ん?なんか今日の須藤さん、いつもと違う、表情硬いし、声も低い。

「おはようございます。田川さん。」

「おはよう、珍しいとこで会うね。さあちゃん、お連れさんは?」
と私の後ろを見る。

「え?あー、私一人ですよ。そうですよね、女一人で府中って珍しいのかな?」

というと、須藤さんがくいつくように

「えっ?一人?一人で来たの?さあちゃん。」

「はい、そんなに変ですか?」

「いやいや、変じゃない、全然変じゃない。むしろ、いいと思う。」

と、今度は満面の笑みにかわる。

「じゃあ、私行きますね。失礼します。」

と頭を下げると、あわてて田川さんが

「待って、さあちゃん。
一人で集中したい人?そうじゃないなら、ご一緒しない?」

「あー、私は一人でも、一人じゃなくても大丈夫です。お二人がご迷惑でなければ
ご一緒してもいいですか?」

「もちろん!いいよ、是非是非。」

今度は須藤さんが笑顔で言ってくれる。
それから3人で、入場した。
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