柔らかな彼女

彼女の別の顔

カズとの久々の男の休日。言ってしまえば、競馬場。
俺たちは、府中本町で待ち合わせ。

「チケット、二人分買ってくるから、入口の横で待ってろよ。」

とカズに声をかけて、券売機に並ぶ。
俺の前には、大きなつばの帽子をかぶった女の子。
後姿はすらっとしていて、なんとなく、さあちゃんに似てるななんて
考えてる。んー、重症だな。どこにいても考えちゃうんだ。

列が動き、前の子がチケットを買って振り返る。

「えっ!さあちゃん!」

まじ?本物だ。

チケットを二枚買って、彼女とカズのほうに歩きながら、頭のなかで
ぐるぐる回る。
誰と来たんだ?彼氏?客?うわー、思いを伝える前に失恋かよー。

って、そんな俺の様子をみたカズが、彼女が一人な事、今日は俺たちと
一緒にって、声をかけてくれる。
ナイスアシスト!!心の中でガッツポーズ!

3人で、話しながら馬場の中に入っていく。
俺は馬場の中に入るの初めてだったんだけど彼女は、いつもここにくるらしい。
レースが始まると、土煙とともにドドドドッという地響きがして、結構興奮する。

3人で予想して、馬券買って、ビール飲んでお互いの馬券を覗きあっては、「ないない。」
とかけなしあって楽しんだ。
そして、いつもの店では知りえなかった彼女のいろんな顔を知った。

まず、彼女は酒が強い。レースを見ながらぐびぐびビールをあけていく。
頬が赤くなるでもなく、普通に新聞見ながら。飲むペースも俺とかわらない。
そして競馬に詳しい。今日も3人のなかで唯一勝ってる。

てまりにいるさあちゃんは、当然ながらビールは飲まないわけで、目の前で笑うさあちゃんをみて
ますます、好きになってしまう。

結局、最終12Rまで楽しんで、混雑する武蔵野線に一緒に乗り込んだ。
ぎゅうぎゅうの車内で、彼女が他の男にふれないように自分の腕の中にかくまった。
もちろん、カズにもふれさせない。
カズは、目だけで「やりすぎ。」と言ってる。

この後、どうしよう。
このまま帰したくない。
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