イジワル副社長と秘密のロマンス
「予想的中」
「え?」
「秘書室にいなかったからここにいるかなと思って来てみた……寒い。寂しく一人で食べてるの見たら、余計寒くなってきた」
意地悪な笑みを浮かべて、樹君があっという間に目の前までやってくる。
仕事から気持ちが離れていると分かる彼らしい表情に、気安さと愛しさが湧いてしまい、ついつい睨みつけてしまった。
けれど周りに目を向けた途端、居心地の悪さが込み上げてくる。人の目がある中で副社長に反抗的な態度をとるわけにいかず、慌てて表情を戻した。
ウッドデッキにはもう一つ席があるけれど、そこには誰も座っていない。
だからすぐ傍に誰かいる訳ではないけれど、まだバルコニーには社員が数人残っている。
みんな副社長の突然の登場が気になっているらしく、遠巻きに興味深々な様子でこちらを見ているのだ。
テーブルにお弁当を置き、慌てて椅子から立ちあがる。硬い声音で返事をした。
「あの……私、何か失敗しちゃった?」
わざわざ彼自らここに来たその理由が思い付かず、もしかしたら仕事でミスをしてしまったのかもと怖くなってきたのだ。
「違うから座って。ただ単に、千花と話したいことがあって来ただけだから」
話したいことと言われ、彼が先ほど副社長室の前で彼が私に何か言いかけていたことを思い出す。