イジワル副社長と秘密のロマンス
「違う。今は監視って言うより、観察って言った方が正しいと思う。だからそんなに警戒しないで」
「……観察?」
「兄貴は千花のことが物珍しいんだと思う」
「私が?」
「そう。俺が惚れてるから。兄貴は俺のことを、人を愛せない冷血な生き物かなんかだと思ってるんだよね、きっと……まぁ俺自身、自分のことを愛に満ちた人間だとは思ってないけど」
樹君が薄く笑みを浮かべた。間近でその綺麗な微笑みを見せられ、鼓動がトクリと跳ねた。顔が熱くなる。
「大切なものは大切にするし」
私を見つめる眼差しが、柔らかくなっていく。頭を撫でる手つきも、とっても優しい。
彼から伝わってくる甘い温度に胸がきゅっと苦しくなった。ドキドキしてしまう。顔も熱くなっていく。
しかし、遠くでドアがぱたりと閉まる音がし、私はびくりと肩を揺らした。
慌てて私を撫でてくれてた樹君の手をがしりと掴み、びくびくしながら辺りの様子をうかがった。
いつの間にか、バルコニーから社員たちの姿はなくなっていた。今のはみんなが出て行った音のようだ。
ホッと息を吐き出した私を見て、樹君が苦笑いする。
「話戻すけど、今夜空いてる?」
掴んでいた手が解かれ、指と指が絡みあった。