イジワル副社長と秘密のロマンス
「会食も無くなって予定空いたから、久しぶりに恋人らしいことしたいんだけど」
繋がった手に軽く力が込められる。触れあった感触が心地よくて、思わず目を細めた。心まで掴まれた気分だ。
「うん。空いてるよ」
気恥ずかしさを堪えながら返事をすると、彼は「良かった」と小声で囁き、背もたれに背中を預けた。
「何食べたい?」
「そうだなぁ」
「かりんとう饅頭?」
「それって、冷やかしに行きたいだけだよね」
笑いながら突っ込みを入れた時、繋がっていた手が離れた。続けて彼の座っている椅子が軋んだ。
「あぁ、そう言えば……」
私が彼に顔を向けるのと、彼の空いている手が私に伸びてきたのはほぼ同時だった。
彼は私の前髪をそっとかき上げ、真剣な目をする。
「樹君?」
「さっきぶつけたとこ、ちょっと腫れてる? 大丈夫」
「え?……本当だ。でもこれくらい平気だよ」
ひんやりと冷たく感じる彼の手が、額を覆う。
ずっと、彼の瞳は私を映している。私だけを映している。
見つめ返していると、さっきの彼の言葉が頭の中に浮かんできた。