イジワル副社長と秘密のロマンス
堂々としているべきなのは分かっているけれど、上手く表情が繕えない。
不安と焦りばかりが膨らんでしまい、膝の上で握りしめた拳が、微かに震え出した。
ぎゅっと目をつぶると、握りしめた手が温かさに覆われた。
「大丈夫」
囁き声に瞳を開けると、自分の手から彼の手が離れて行くのが見えた。
彼は立ち上がり、気だるそうに首元を手でおさえながら歩き出す。
そんな彼の後ろ姿を私は目で追いかけた。
「なんの用?」
目の前で立ち止まった樹君のオーラに気圧されたのか、星森さんが一歩後ずさりをした。
「あっ、はい……えっと、あの……社長がお探しです」
「そう……誰かよこすくらいなら、直接電話かけてきたら良いのに」
ちらちらと樹君を見上げたのち、星森さんは思い出したように私を見た。
その瞬間、顔つきが変わる。
恥ずかしそうに、そして口元にほんのりと微笑み浮かべ樹君を見ていたのに、私へと顔を向けた途端、眉間にしわを寄せ、一気に刺々しくなったのだ。
どんな言い訳をすべきなのか、この先彼女とうまくやっていけるのか、いろいろと不安になってしまうけれど、自分の手元に残った樹君の温もりが、波立った感情を和らげてくれる。