イジワル副社長と秘密のロマンス
「はい。分かりました、ありがとうございます」
宝さんに微笑み返し、ちらりと樹君を見た。
言葉をかけようと思ったけれど、彼がまだ星森さんに捕まっているのを見てしまうと、何の言葉も出てこなかった。
「樹、お前も帰るんだろ? 暇なら一緒に飯でも食べに行こうか?」
樹君は星森さんの手を振り払った後、社長に向かって思いっきり顔をしかめた。
「行かない。暇じゃないから」
「わあぁっ! おふたりで食事とか、いったいどんなお店に行くんですか!? きっと素敵なお店に行かれるんでしょうね。いいなぁ。羨ましいなぁ」
樹君の素っ気ない言葉は、テンション高めの星森さんの声に見事にかき消されてしまった。
「私も一緒に連れて行って下さいよ!」
振り払ったばかりの手が、また彼の腕を捕らえた。
樹君が呆れたような表情を浮かべて、星森さんを見降ろしている。
その様子をじっと見つめていると、突然樹君が私に視線を向けた。
目と目が合い、澄んだ瞳に囚われた途端、気まずさが込み上げてくる。
些細なやりとりすら面白くなく感じてしまっている……そんな心の狭い自分を見透かされたような気持ちである。