イジワル副社長と秘密のロマンス
店長が大きく頷いた。急に怖くなって、私は両手で自分の体を抱きしめた。
「三枝さんのことよね。ここ最近姿を見かけないのですが辞めてしまったのですかってしつこく何度も聞いてきたから、逆に、三枝とはどういう関係ですかって聞き返したんだけど……ブツブツ何か言いながら、その人帰ってしまったのよ」
「……誰だろう。怖い」
「それ以来、そのお客様の姿を誰も見かけてないから、気が済んだのかもしれないけど、でもね、一応こういうことがあったのよって話だけはしておこうと思って。心当たりはない?」
「……特に」
私共々この店を贔屓にしてくれているお客様には異動の手紙を送っているから、知っているはずだ。
お客様が私のことを覚えていてくれて、あの店員最近見かけませんねという話になったというのならわかるけれど……そこまで熱狂的に私の行方を気にかけてくれる男性客に覚えはない。
「マッシュルームカットに眼鏡の男性よ。ぱっと見、気難しそうな感じで……」
続けて出てきた情報に、息が詰まった。思わず呻いてしまった。
その男性を私は知っている。たぶんきっと、いや間違いなく、それは袴田さんだ。