イジワル副社長と秘密のロマンス
『千花? 俺。表参道店にカタログ届けに行ったって聞いたんだけど、まだそこにいる?』
「うん」
『分かった。今からそっち行く』
「……大丈夫なの?」
『何が?』
何がと聞かれ、口ごもる。もちろん、頭の中に広がっていくのは、さっきみた社長室での光景である。
「夕飯がどうのこうのって、社……お兄さんと話をしてたから」
社長と言いそうになり、焦ってしまう。
すぐに言い直しながら店長を見れば、先ほど渡したカタログをデスクの引き出しにしまい、机上のパソコンを操作し始めたところだった。
聞いていない、もしくは言い直したことを気に留めていない様子に、ほっと肩の力が抜けていく。
『なにそれ、行くわけないじゃん。千花と一緒に過ごしたいのを我慢してまで、なんで兄貴とふたりで飯食いに行かなきゃならないわけ? すっごい嫌なんだけど。苦痛なんだけど。地獄なんだけど』
「そっ、そこまで言わなくても」
『言うし。これでも俺、千花とのデート、けっこう楽しみにしてたから。いろいろぶち壊さないでくれる?』
拗ねている。電話越しにそれがはっきりと伝わってきて、私は思わず目を細めた。
「それはそれは、大変失礼いたしました」