イジワル副社長と秘密のロマンス
「もしかして今の電話、彼氏? これからデート? ちょっと、いつ彼氏できたのよ!」
曖昧に誤魔化そうと試みた私の態度から、店長は自分の言葉に確信をもってしまったらしい。興味津々な顔で話を続ける。
「彼氏どんな人なの? どこで知り合ったのよ……あっ、うそっ……もしかしたら、本社の人と――」
「また来ます! 失礼しましたっ!」
これ以上言わせてなるものかと、私は声を張り、店長の言葉を遮った。
名前を呼ばれたけれど、そこは聞こえないふりである。私はそそくさとスタッフルームを後にした。
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店に残っていたスタッフへ軽く挨拶をしながらも、進む勢いを殺さず、一気に店の外へと出た。
とりあえず店の前から離れたくて、本社に向かって歩き出したけれど、二十メートルほど歩いたところで、私は足を止めた。
すれ違ってしまう可能性もある。彼に言われた通り、下手に動かず、私は表参道店の近くで樹君が来るのを待っていた方が良いような気がしてきた。
歩道の端に移動する。彼の姿を見落とさないように本社側からの人の流れを目で追ったり、手近のお店のショーウィンドウを眺めたりと、とにかくソワソワしていると、突然視界の隅が陰った。
誰かが自分の傍で立ち止まったことに気付かされれば、思い浮かぶ姿は一つしかない。