イジワル副社長と秘密のロマンス
袴田さんのもう片方の手も、すがりつくように私を捕らえた。
「三枝さんの素敵な笑顔は、僕の傍にこそ、僕の店にこそ、ふさわしい。そう思いませんか? 思いますよね!?」
鬼気迫る表情で訴えかけてきたけれど、もちろん同意などできるはずがなかった。
「なんでそれが分からないんだ! なんで分かろうともしないんだ!」
段々と怒られているような気持ちになってしまえば、袴田さんが続けて投げつけてくる言葉も頭に入ってこなくなる。
責め立てるよう声音が、頭の中で響き出す。視界が揺れる。唇が震え出す。
恐い。
この状況が恐くて仕方がない。
「何してんの?」
後ろから割り込んできた凛とした声に、ホッとする。加速していた恐怖心が急停止し、徐々に肩の力が抜けていく。
「……樹君」
いつの間にか、後ろに樹君が立っていた。彼が来てくれたことで張りつめていた気持ちが緩み、一気に涙が込み上げてきた。
樹君はそんな私と目と目を合わせてから、私を掴んでいる手、それから私と向き合う形で立っている袴田さんへと順に視線を移動させ、徐々に眉間のしわを深くさせていった。
「場合によっては許さないけど」