イジワル副社長と秘密のロマンス
湯船の縁に手をかけ立ち上がろうとした瞬間、ぱたりとお風呂場の戸が開いた。
「千花遅すぎ。俺も入る」
立ち上がりかけていた体を、勢いよく半回転させる。ぼちゃりと派手な音を立ててお湯の中へと、戻ってしまった。
ほんの一瞬、見てしまった光景に、一気に顔が熱くなっていく。
お風呂場に入ってきた樹君は裸だった。
「千花」
名を呼ばれたけど、返事をすることができなかった。彼に背を向けたまま、湯船の隅で身体を小さくさせる。
前向きな気持ちはどこかに飛んでいってしまった。頭の中は完全にパニック状態である。
「……千花」
もう一度呼びかけられると同時に、身体が跳ねた。彼の声がすぐ後ろから聞こえてきたからだ。
樹君の手が私の肩に触れる。そっと、背中に柔らかな感触が押し付けられ、私は反射的に声を発してしまった。
「そこで、ちょっと待ってて」
彼の吐息までをも感じ取ってしまえば、背中に口づけされたのだと、否応なしに気付かされる。
彼の唇の甘い余韻が広がっていく、身体の奥底にも熱が生まれる。
彼の気配が自分から離れて行くとすぐに、室内がシャワーの音で満たされた。
ドキドキしながら肩越しに後ろを見れば、身体を洗い出した彼の姿が目に入ってきた。