イジワル副社長と秘密のロマンス
水が滴り落ちる肩から横腹へと視線を落とし、私は慌てて視線をそらす。
自分とは違う、逞しさあふれる彼の身体に、頬が熱くなっていく。
恥ずかしくて、この場から逃げ出したくて仕方がなくなってくる。
彼が身体を洗っているこの状態なら、浴室から逃げ出せるかもしれない。
むしろ洗い終わってしまったら、もう逃げられない気がする。
そう考えると同時に、身体が動いた。
「おっ、お先に失礼しますっ!」
宣言しながら立ち上がり、湯船から出て、そのまま一気に浴室から出ようとした。
……したけれど。
勢いに身を任せ、身体を洗っている彼の後ろを通りすぎようとした時、足が泡で滑ってしまった。
悲鳴を上げながら、咄嗟に私はすぐ傍にあった身体に力いっぱいしがみついた。
「……千花?」
シャワーの水音に混ざって、私の名を呼ぶ彼の声が聞こえてきた。
ハッとし顔をあげると、樹君が目を見開いて私を見降ろしていた。
「この状況で大胆に迫ってこないでくれない?」
「そっ、そんなつもりはっ……うわっ!」
私の反論を封じるかのように、樹君に頭からシャワーをかけられてしまった。
「身体熱すぎ。もしかして、のぼせた?」