イジワル副社長と秘密のロマンス
確かにのぼせ気味である。少しぬるめのシャワーが心地よくて、私は少しだけ冷静さを取り戻した。
「……恥ずかしくて、出れなくて、ずっと入ってたから。のぼせてるかも」
樹君に背中を向けながら素直に打ち明けると、樹君が小さく息を吐いたのが聞こえた。
「やっぱり。そんなことだろうと思った。迷ってないでもう少し早めに突入すればよかった」
浴室内に響いた低い声音を聞けば、先ほどドアの向こうから、心配そうにかけてきた言葉は彼の本音だったのだと気付かされる。
素っ気なくて、呆れているような言葉の裏には、深い優しさがある。それをしっかり私に向けてくれている。
鼓動がまたとくとくとくと、早くなっていく。
彼を愛おしく思う気持ちが大きくなっていく。胸が甘く痺れた。
「いっ、樹君!」
声が裏返ってしまった。頬が熱い。
「なに?」
胸元を覆い隠すように添えていた両手に、自然と力が入ってしまう。すっと息を吸い込んだ。
「私、先に出て……待ってるね」
声を震わせながら、やっとの思いでそれだけ告げれば、そっと彼の温かな手が私の背中に触れた。ぴくりと肩が跳ねてしまう。