イジワル副社長と秘密のロマンス
「うん。すぐ行く。待ってて」
彼もそれだけ言い、浴室のドアに向かって私の身体を押してくれた。
顔を真っ赤にさせながら、なんとか浴室をあとにする。小さな音を立てて戸を閉めれば、また浴室内からシャワーの水音が響き始めた。
傍にあったバスタオルを掴み取り、それをきゅっと抱き締めながら、私は深く息を吐いたのだった。
+ + +
ひんやりとした廊下から、すでに薄暗くされているリビングルームへと、私は静かに足を進めていく。
薄暗いと言っても、天井の一部分や大きすぎるテレビの後ろなどには間接照明による明かりがあるため、歩き進めていくぶんには、なんら問題はない。
滑らかなソファーに、力なく座りこみ、頬を両手で押さえた。
「緊張した」
無意識に気持ちが口をついて出てきた。本当にその言葉しかない。
視界に、自分が今身に着けているシャツの袖が映りこんだ。
樹君のを借りているから、私にはけっこう大きめである。
彼と自分の体の大きさの違いを実感してしまうと、収まりかけていたドキドキがまた復活する。
おまけに、浴室で見た彼の筋肉質な背中も思い出してしまったから、なおさらである。