イジワル副社長と秘密のロマンス
私は両手の平をじっと見つめた。
足を滑らせ、咄嗟に抱きついてしまったあの時の感触が、まだ手に残っている。
筋肉質で、逞しくもあるのに、弾力のある綺麗な肌。
彼の素肌にもう一度触れたい。抱きつきたい。包み込まれたい。
一拍間を置いて、私は両手をぎゅっと握りしめた。
彼にきつく抱きしめられる自分を、そして彼の腕に包まれたらどんな感じだろうと……恥ずかしくも、妄想してしまったからだ。
浴室の方から、小さくもシャワーの音が聞こえていることを耳で確認しつつ、独り暮らしには広いリビングルームをキョロキョロとみまわす。
家具も普通に揃っているけれど、物は必要最低限しか置かれていない、生活感があまりない印象である。
広さがあるから余計にそう感じるのかなとも考えたけど、さきほど通りすがりに覗き込んだキッチンも料理をしているような感じではなかった。
そもそも彼は多忙を極めている。だからここには寝に帰っているだけと言われても納得してしまう。
室内を眺めていると、中途半端に空いている扉が目についた。しかも、扉の隙間から淡い明かりが漏れ見えている。
私は興味に駆られ、ソファーから立ち上がった。なんとなく忍び足で扉に近づいていき、そっと室内をのぞき込んだ。