イジワル副社長と秘密のロマンス
手直しすることが出来ただろうに、あえてスリムにしなかったのだろう。そこも樹君らしくて、笑みを浮かべてしまう。
まずはネコのぬいぐるみをじっくり見せてもらおうと、私は手を伸ばした。
「……えっ」
そっと、ぬいぐるみを掴み上げ、はっとする。
黒ネコに連なるように、白ウサギのぬいぐるみもくっ付いてきたからだ。
ぬいぐるみの手と手が、しっかりと縫い止められている。
黒ネコは樹君。白ウサギは私。
昔交わした他愛ない会話を覚えていてくれたことも嬉しいのに、こんなふうに手と手を繋げてくれたことに感激し、目頭が熱くなってしまう。
「あっ。もう見つけてる」
笑いを堪えているような声が、静かな部屋に響いた。
私は二つのぬいぐるみを胸元に抱きしめながら、勢いよく戸口に向かって振り返った。
「樹君っ!」
そして、嬉しさに涙を浮かべながら、樹君へと走りだす。
そのまま思い切り彼の胸へと飛び込んでいった。
「嬉しい。王冠がすごく格好良くなってるよ。しかもうさぎもいるよ。しかもっ、手と手が繋がってるよ……嬉し……嬉しいよ……本当に……」
溢れんばかりの喜びを伝えようとしたけれど、涙声になってしまって、言葉を続けられない。