イジワル副社長と秘密のロマンス
「おいおい樹、いつも以上に愛想がないな……もしかしてそれ、千花ちゃんが可愛いから照れ隠しとか言わないよな?」
「は? 可愛い?」
昴じいさんに言い返しながら、さっきのお返しとばかりに、俺は彼女に目を向ける。
つま先から頭へと視線を上げると、華奢な肩がびくりと跳ねた。ついでに目を眇めておく。ちょっぴり照れていたようだったその表情が、すぐに強張り始めた。
「樹。女の子には優しくしなさい。お前そんな意地悪ばかりしてると、モテないぞ」
「意地悪なんてしてるつもりないけど」
意地悪ではない。あくまでお返しだ。
慌てた足取りで、朝子さんもキッチンからでてきた。右手と左手にそれぞれクッキーの乗った皿を持っている。
「まぁまぁ……でも、樹君はイケメンだから、もうじゅうぶんモテてるでしょ。女の子が放っておかないんじゃない?」
言いながら、一皿を俺が座っているソファーの前にあるローテーブルへと、そしてもう一皿は彼女の立つ傍にあるダイニングテーブルへと置いた。
だから彼女はそのまま椅子に座るだろうと思ったけれど……俺の予想は外れることとなる。
「うん。確かに、顔は悪くないよね。顔は」
なぜか、彼女が俺の隣に腰かけてきた。おまけに不自然な笑みを浮かべながら、“顔は”をしっかり強調させてくる。