イジワル副社長と秘密のロマンス
「私、三枝千花。改めて、よろしくね」
口調が微妙に怖い。笑顔も微妙に怖い。握手を求め差し出されたその手も怖い。
悪寒に身を引くと、昴じいさんが「樹!」と強く呼ぶ。
一つ息を吐いてから、俺は観念し、彼女の手を掴んだ。
「俺、藤城樹……以上」
軽く握って、すぐに手を離そうとしたけれど、出来なかった。びっくりするくらい強い力で、彼女が握り返してきたからだ。
「よろしくね……って、言ってるでしょ」
ぎりぎりと俺の手を握りしめてくる。
必死な様子から、これは彼女なりの仕返しなのだと気づき、俺はもう一度息を吐く。
痛いと言わせたくてやってるのかもしれないけれど、見くびってもらっては困る。
俺だって男だ。同い年の女に、力勝負で負けない。
「どうぞよろしく」
言い終えると同時に、俺も手に力を込めた。途端彼女が目を大きくさせる。
負けてなるものかという風に彼女は握り返してくるけど、それを抑え込むように俺も力を強くする。
「うそ……つよっ……いっ、痛いっ」
困ったような顔をしてから、みるみる泣きそうな顔へと変化していく。
その表情の変化が妙に面白くて、思わず笑ってしまった。
「変な顔」
「うるさい! 顔のことは放っといてよ!」
力を抜けば、彼女の手からも力が抜けていく。