イジワル副社長と秘密のロマンス
「俺、男なんだけど。力勝負挑むとか無謀すぎない?」
「私、握力にすごい自信あるの! 樹君、けっこう背が小さいし、細いし、力弱そうに見えるし、ひ弱そうだし、絶対勝てると思ったの!」
「ちょっ、無礼すぎ」
「そっちこそ! 可愛くないって言ったじゃん!」
「俺、そんなこと、一言も言ってない」
「目で言ってた!」
言い合っていると、またキッチンからリビングに入ってきた朝子さんが「あらあら」と微笑んだ。
「賑やかねぇ」
微笑ましげに言われてしまい、途端、俺たちは口を噤む。
“仲が良いわねぇ”みたいな響きに反論したくて、ちらり彼女を見ると、ちょうど彼女も俺を見た。
でも勢いよく顔をそむけられてしまい、俺は膨れっ面の横顔を睨みつける。
「はい。どうぞ」
朝子さんがアイスティーをローテーブルの上に置き、またキッチンへと引き返していった。
置かれたのは、二つ分。
「いただきます!」
なんでこっちに置くんだよとため息を吐くと、彼女が片方のグラスを手に取った。
飲む前、そして飲んだ後も、ちらちらと俺に不機嫌な眼差しを向けてくる。
嫌ならダイニングテーブルの方に行けばいいのにと恨めしく思っても、彼女は俺の隣に居座り続ける。挙句、クッキーにまで手を伸ばし出す始末だ。