イジワル副社長と秘密のロマンス
彼女も小声で呟き返しながら、二枚目三枚目とクッキーに手を伸ばしていく。頬張れば、また嬉しそうに目を細めた。
「は~い! 張り切りすぎちゃって、いっぱい作っちゃった。たくさん食べてね!」
「……げっ」
キッチンからまた戻ってきた朝子さんを見て、思わず声が出た。
スコーンやロールケーキ、スイートポテトなどなど。甘そうなものが大皿にてんこ盛りになっている。
「樹君、どういうのが好きか分からないから、いろいろ作ってみたのよ。どれから食べる?」
「……いやむしろ、全部に――」
全部苦手と本音を口にしかけた瞬間、横に座っている女に肘で小突かれた。
「普段は私たち二人だけだし、余ってしまうからあまり頻繁に作れないけど、今年の夏は樹君がいるから、いろいろ作れて嬉しいわ」
「おいおい。あんまり樹に甘いものばっかり食わせるなよ。家に帰るとき別人のように太ってたら、俺が翼にどやされる」
ユメにおやつのクッキーを与えていた昴じいさんが、すかさず口を挟んだけれど、朝子さんは聞いていない様子だった。
「樹君、たくさん食べてね。千花ちゃんも、あとで家に持って帰ってね。まだまだたくさんあるから」