イジワル副社長と秘密のロマンス


「行くよ、ユメ」


瞳を輝かせ、あらぬ方向を見つめ、尻尾を振り続けているユメに一言命令を下す。俺は足を止めず、進んでいく。

今はユメの散歩中。

昴じいさんの所に来てから、散歩はずっと俺の役目みたいになっていたから、散歩のコースはもうすっかり歩き慣れている。

ユメは俺に従うように歩き出しはしたけど、やっぱり声のした方が気になるみたいだった。何度も振り返り見ている。

後ろからバタバタと足音が迫ってくる。

やっぱり来た。彼女が選んだ行動に変なくすぐったさを感じていることに気付かぬふりをして、俺は「来なくていいのに」と小さく呟いた。


「なんで無視するのよっ!」


がしりと腕を掴まれた。反射的に振り返ると同時に足元にいるユメが嬉しそうに鳴いた。


「……え?……あぁ。呼ばれてるの、全然気付かなかった」

「その言い方! 絶対気付いてたよね! 意地悪っ!」

「俺、今、散歩で忙しいから」


言い終えると同時に、ユメを引きつれ歩き出す。

夕方、昴じいさんの姉である俺の祖母ちゃんがこの家に来ることになっている。

社長業を営んでいるだけあって、祖母ちゃんは家族の中で一番忙しい人だ。


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