イジワル副社長と秘密のロマンス
それにもかかわらず、俺が一ヶ月世話になったからと、夏休みが終わる前に顔を出すらしいのだけど……きっとそれは建前で、行きつけのバーで酒が飲みたいというのが本音だろう。
時刻は午後四時。祖母さんはそろそろ到着するかもしれない。
だから俺はさくっとユメの散歩を終え、留守番できる状態にならなくちゃいけない。
ぱたぱたと足音が、俺を追ってきた。
「あと一週間で、夏休み終わっちゃうね。早いね」
彼女が隣に並び、一緒に歩き出した。俯きがちに囁きかけてくる。俺は少しだけ歩くペースを落とした。
「樹君、宿題全部終わった?」
「まぁね。そっちは?」
「あとちょっとだけ残ってる」
彼女が俺の腕を引いた。俺は目線だけ彼女に送る。
「ねぇ……樹君って、いつ東京に帰るの?」
俺の目を見ないまま、そう言った。
「3日後。金曜日に帰る予定」
「……そっか。また来る? 来年の夏とか……また会える?」
弱々しい声が心の中で強く響いた。寂しげな表情を見せられ、俺は動揺していた。
頭の中が真っ白になるなんて初めての経験だった。
「もう来ないんじゃない? 来年の夏はもう中学生だし、部活とかで忙しいでしょ」