イジワル副社長と秘密のロマンス
とりあえず言葉を捻りだし、すぐに後悔した。
彼女が今にでも泣き出しそうな顔をしている。
確実なのは俺たちが中学生になるということだけ。先のことなんてわからない。
なんで俺は“もう来ない”なんて言った?
それだって断言できることじゃない。
もしかしたら来年は自分の意志で、ここに来ているかもしれないのに。
胸の中がざわざわと波立っている。
先の言葉を訂正したいのに、言ってはいけない気がした。
気持ちだけが妙に焦っている今、何か言葉を発したら、ただそれだけで彼女を泣かせてしまうような気がして、話しかけることができなかった。
「ねぇ、今、時間ある?」
小さく囁きかけてきた彼女が顔を上げ、まっすぐに俺を見た。
「樹君と一緒に行きたい場所があるの。今日が最後かもしれないし、私にちょっとだけ付き合って! ねっ?」
俺を見て、にっこり笑っている。
笑ってはいるけど、気持ちを隠しきれていない。俺には寂しそうに見えた。
「……別にいいよ」
早く帰って来いと言われていたはずなのに、それは彼女の申し出を断る理由になどならなかった。
「どこ?」