イジワル副社長と秘密のロマンス
俺はちらりと頭に浮かんできた祖母の顔を心の底に押しやり、嬉しそうに笑った彼女にそう囁きかけた。
+ + +
いつもの散歩道から外れ、彼女に続いて歩いていく。
歩きながら、彼女が町のことを話して聞かせてくれる。
この道の先に自分が通っている小学校があるとか、いつも遊んでる公園はどこにあるとか、本屋は駅前に行かないとないとか、駅前には美味しいお店が揃ってるとか。
俺には土地勘が全くないから、この先の道とか、駅の近くとか言われてもわからない。
かろうじて、思い描くことが出来るのは駅前くらいだ。
「で?」と聞き返したくなるところだけど、やけに必死に彼女が俺に説明してくるから、とりあえず相槌だけ返しておいた。
「こっちだよ」
彼女が指し示した方向には小高い山、そして、目の前にはそこへ続くだろう入口があった。
車が侵入できないようにポールが三本立てられていて、その向こうはゆるい上り坂が続いている。
両脇には木々が並び立っているから、道は薄暗く見えた。夕暮れ時でもあるから余計かもしれない。
彼女が軽い足取りでその先へと進めば、ユメも俺を引っ張るように進み出す。
所々ある石造りの背の高い灯篭を横目で見ながらひたすら進んでいくと、分かれ道に出た。