イジワル副社長と秘密のロマンス
笑みを浮かべて樹君に近づいていく男性に、私は無意識に身体を強張らせていた。
その人は、樹君が表参道で袴田さんを追い払った後、私たちを追い抜いていった車の中にいたあの男性だった。
樹君は鬱陶しそうに眉根を寄せる。その表情を見て、自分に何かと絡んでくる面倒くさい男だと聞いたことも思い出した。
「……来てたんだ」
「もちろん今回はうちとのタイアップでもあるし……ほら、俺も実際に見ておきたかったってやつ? ついでに久しぶりだから藤城といろいろ話もしたかったし?」
軽く告げられたその言葉で、男性がロイヤルムーンホテルの関係者なのだということも知る。
ロイヤルムーンホテルは関東を中心に全国へと、そしてアメリカ、ヨーロッパやアジアにまで事業展開しているハイクラスのホテルである。
新たに湾岸エリアに建てられたホテルには充実したブライダル施設が完備されていて、そこで今回、AquaNextとタッグを組むことになったのだ。
「仕事の話ならいくらでもするけど、それ以外の話はないから……話したくない」
「ホント、性格も相変わらずで腹立つ」
男性は樹君を指差し、津口さんに向かって首を傾げた。
「ねぇねぇ、コイツのどこがそんなに良い訳? 顔の良さ? 頭の良さ? 身分? 性格の悪さ? セックスの上手さ?」