イジワル副社長と秘密のロマンス
並べられた言葉にどきりとしてしまう。
津口さんは一瞬目を見開いた後、にこりと笑った。
「え~? 全部に決まってるじゃん!」
“全部”
その一言が、ずんと心に重く響いてきた。数秒、息ができなくなる。
それは今まで考えないようにしてきたことだった。
こんな綺麗な人に好意を持たれているのだから……もしかしたら……私と再会する前に、男女の関係があったとしても不思議じゃない。
ずっと心の片隅に引っかかっていた可能性が、今の一言で、過去の事実となってしまった。
そっか。樹君は津口さんと一晩を共にしたことがあるんだ。
知ってしまった事実が、重苦しさを増し、心を浸食していく。
彼も大人の男性だと、それに自分と再会する前の話なのだと、頭の中で冷静な意見を並べてみても、心はそれらをすんなりと受け入れることなどできなかった。
樹君が苛立ったように息を吐く。
「何、血迷ったこと言ってんの?」
まだ何か言おうとしていたけど、戻ってきたドレス姿の女性に気がつくと、彼は気だるげに二人から顔をそらし、女性たちへと歩み寄っていった。
社長が樹君のあとを追っていく。星森さんはその後ろ姿を目で追いながらも、私の方へと近づいてきた。