イジワル副社長と秘密のロマンス

並べられた言葉にどきりとしてしまう。

津口さんは一瞬目を見開いた後、にこりと笑った。


「え~? 全部に決まってるじゃん!」


“全部”

その一言が、ずんと心に重く響いてきた。数秒、息ができなくなる。

それは今まで考えないようにしてきたことだった。

こんな綺麗な人に好意を持たれているのだから……もしかしたら……私と再会する前に、男女の関係があったとしても不思議じゃない。

ずっと心の片隅に引っかかっていた可能性が、今の一言で、過去の事実となってしまった。


そっか。樹君は津口さんと一晩を共にしたことがあるんだ。


知ってしまった事実が、重苦しさを増し、心を浸食していく。

彼も大人の男性だと、それに自分と再会する前の話なのだと、頭の中で冷静な意見を並べてみても、心はそれらをすんなりと受け入れることなどできなかった。

樹君が苛立ったように息を吐く。


「何、血迷ったこと言ってんの?」


まだ何か言おうとしていたけど、戻ってきたドレス姿の女性に気がつくと、彼は気だるげに二人から顔をそらし、女性たちへと歩み寄っていった。

社長が樹君のあとを追っていく。星森さんはその後ろ姿を目で追いながらも、私の方へと近づいてきた。


< 222 / 371 >

この作品をシェア

pagetop