イジワル副社長と秘密のロマンス


「そう言えば、あのモデルの子。津口可菜美だっけ? ずーっと副社長のこと話してたよ。知り合いなの?」

「そうみたい」


なんとなくスタジオ内へと目を向け、私は息を詰めた。白濱副社長と目と目が合ってしまったからだ。

しかも相手は、目を大きくさせ驚いているようにも見える。

私のことを見て、あの日樹君と一緒にいた女だと気づいてしまったかもしれない。

何か面倒なことが起きなければいいのだけれどと、内心ひやひやしていると、白濱副社長が朗らかに津口さんへと話しかけ、彼女の華奢な腰をそっと押した。

津口さんも笑みを浮かべながら、白濱副社長のもとを離れていく。向かう先にいるのは樹君だった。

ひとりになった白濱副社長も動き出す。ニコニコしながら、こちらに歩いてくる。

そのまま私たちの横を通りすぎて行くことを祈っていたけれど、その願いは叶わなかった。


「どうも」


私の目の前で足を止め、気さくに声をかけてきた。

「お疲れ様です」と挨拶を返してから、俯きがちになる。絶対に目を合わせたくない。


「藤城の愛想がある方から、君たちはもともとショップの店員だったって聞いたよ? どこの店で働いてたの?」

「……社長から、お聞きになられたんですね」



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