イジワル副社長と秘密のロマンス
「可菜美はね、あのドレスで撮影はしてるんだよ。モーニング着た男性モデルと並んで。でも写真の出来がお気に召さなかったみたいで、相手は藤城弟が良いって可菜美が言いだしたんだよね。まぁ確かに、さっきの男のモデルはいまいちだったけど」
私もさりげなくその手を払いながら、「そうだったんですか」と言葉を返す。
男性モデルとの撮影に居合わせていないから、そのことに関してはコメントのしようがないけれど、さっき向き合って立っていた樹くんと津口さんの姿を思いだせば、間違いなく絵になるだろうことは予想できた。
樹君のモーニング姿。絶対に素敵だと思う。広告としても最高の出来栄えになりそうな予感がする。
見てみたい。
……見てみたいけど、その隣に笑顔の津口さんが立つのだと思うと、複雑な気持ちになってしまう。
「嫌。俺はモデルじゃないから。素人引っ張り出さないで」
「素人じゃない! 経験者でしょ! 私はあの時のことも踏まえて言ってるの! 樹とだったら絶対良いものになる」
「ならない……いろいろ腹立ってきたから、この話、もうやめてくれる?」
津口さんが放った言葉に、ドキリとさせられてしまった。
「……経験者?」
モデル経験者。樹君からそんなこと一度も聞いたことがない。