イジワル副社長と秘密のロマンス
彼と昔話はする。けれど、それはたいていふたりで共有している思い出ばかりである。
白濱副社長は私がこぼした言葉を、聞き逃さなかったらしい。驚いた様子で顔を近づけてきた。
「あれの話だよ。宣伝ポスター。藤城弟と津口可菜美、子供のくせに、めちゃくちゃ色気たっぷりで。最初見たとき、しばらく目を奪われたよ。今思うと、めちゃくちゃ悔しいけどさ」
樹君のその経歴だって初耳だというのに、樹君と津口さんのそんなポスター、知ってるわけがない。
「あれ? もしかして知らない?」
知らなかったことを認めるのも癪に障る。私は返事をせず顔をそらした。
「知らないんだ。へぇ」
この場を離れようと足を前に出したけれど、もう一歩先へと進む前に、白濱副社長の手が私の両肩に触れた。そのまま元いた位置へと引き戻されてしまった。
「可菜美が言ってる通り、藤城弟と彼女が素材になれば、絶対良い写真が撮れる。来季の追い風になると思うなぁ。ここは社のためにと、秘書としてあの頑固な副社長に進言してみてくれないかな?」
「私が、ですか?」
進言することは別に構わない。けれど、あの嫌がりようである。私が言ったところで、樹君が意見を曲げることはないだろう。