イジワル副社長と秘密のロマンス

彼の言葉はもちろん彼女の耳にも届いていた。足取り荒く、樹君の後ろから津口さんが姿を現した。


「彼女!? 何よそれ! 誰、この女!」


憤りたっぷりの眼差しを、彼の隣にいる私に突きさしてきた。

ドレス姿で怒りの表情を浮かべる彼女は、鬼気迫るものがある。この前以上の迫力だ。思わず身体が強張ってしまう。

社長も白濱副社長も私と同じように感じたらしい。引き気味に津口さんを見ている。

けれど、というかやっぱり、樹君だけは何とも感じていないようだった。


「俺の秘書。で、彼女」


私たちの関係を、堂々と口にする。


「秘書?!……ちょっと待って。アンタのこと、どっかで」


津口さんが私を睨みつけたまま、顔を近づけてくる。

怖いから目をそらしたい。でもそらしたら飛びかかってきそうな気がして、それも出来ない。

目を合わせて数秒後、津口さんが「あっ!」と大声をあげた。


「あの時の女! 信じられない! どんな手を使ったのよ! いつの間に樹の元にもぐりこんだのよ!」

「もぐりこんだとか、そういうことでは」

「うるさい! あんたが樹の彼女とか、図々しいにもほどがあるわよ!」


ヒステリックな声を発し、津口さんが私に手を伸ばしてきた。

ほっそりとした手に掴まれそうになった瞬間、腕を引っ張られ……樹君の胸へと倒れ込んだ私は、温かな手に抱き締められていた。


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